現地コラム
COLUMN
マンタ
1.マンタとは
マンタとは、スペイン語でマントを意味する言葉で、その姿がマントに似ているところからつけられた呼び名です。
マンタはエイの一種で、トビエイ目に属する魚です。
最近まで「オニイトマキエイ」という1種類のエイだと思われていましたが、2009年にこれが実は2種類の別のエイだということがわかりました。
一つは元々知られていた「オニイトマキエイ」ですが、もう一つは「ナンヨウマンタ」と名付けられました。
2種類の違いは口のまわりの色にあり、口のまわりが白いものをナンヨウマンタ、それ以外を「オニイトマキエイ」と判別します。
当時「オニイトマキエイ」を飼育していた沖縄美ら海水族館、海遊館、品川アクアスタジアムの各館が、自館の「オニイトマキエイ」を調べたところ、そのすべてが「オニイトマキエイ」ではなく、新種とされた「ナンヨウマンタ」の方だったことがわかりました。
そして、沖縄地方沿岸のサンゴ礁などで見かけるマンタのほとんどが、「ナンヨウマンタ」だということも判明しました。
また、日本列島の太平洋側の外洋で見られるマンタが、「オニイトマキエイ」であるということも調査の結果、わかっています。
「ナンヨウマンタ」はおとなしくて好奇心が強い、人懐っこいエイです。
大きさは「オニイトマキエイ」より一回り小さく、5m程度、重さは3tになります。
また、寿命は40年ほどです。
「オニイトマキエイ」は世界最大のエイで、「ナンヨウマンタ」は2番目に大きなエイです。
彼らは集団で暮らしており、血縁集団とメスの集団の2種類があるということもわかってきました。
マンタは魚類の中でも最も大きな脳みそを持ち、知能が非常に高いことで知られています。
時には複雑な行動をすることもあり、なんと人間を識別することもできるのです。
マンタは体が大きいけれど、エサとするのは貝などではなく、小さなプランクトンです。
ダイバー1人ぐらいは余裕で入ってしまいそうな程、大きな口を開けて、プランクトンを海水ごと吸い込みます。
飲み込んだ海水はエラから排出し、残ったプランクトンを食べます。
肉食ではありませんから、もちろんマンタは人を食べません。
また、攻撃するための毒針なども持っていません。
ここが、毒針を持つエイとの大きな違いです。
また、長いしっぽに背骨が無いという点も、他のエイとは異なります。
大きな体のおかげで天敵はあまりいませんが、唯一、大型のサメと人間が敵なのです。
年々、数は減少しており、「国際自然保護連合」がマンタを絶滅危惧種として認定しています。
全身ほぼ真っ黒の個体は、ブラックマンタとしてダイバーに人気です。
通常、エイの目は背中についていますが、マンタの目は前縁にあります。
口もエイは底面にあることがほとんどですが、マンタの場合は前端にあります。
ちなみに、マンタはお腹の模様で個体を識別することができ、真っ黒だったり、黒い斑点があったりと様々です。
この模様がすべての個体で異なっているので、人間でいうところの「指紋」のように、見分けることができます。
マンタは魚類ですが、交尾をする上に、胎生です。
母親のおなかの中で1年間育てられてから、一度の出産で1~2匹ずつ生まれてきます。
赤ちゃんマンタのサイズは約1m、重さは50kg程度です。
大きな体を持つマンタですが、その身体能力は見た目以上に高く、なんと海面から約2m上の位置までジャンプすることもできます。
群れになって大勢でジャンプしていることもあり、その迫力は凄まじいものです。
ですが、どうしてそのようにジャンプをするのかについては、未だ明らかになっていないそうです。
また、カツオやマグロのように泳ぐことでエラ呼吸をしているので、常に回遊し続けている魚でもあります。
ちなみに、よく似た名前の「イトマキエイ」という種類は「オニイトマキエイ」「ナンヨウマンタ」とは別の少し小さいエイで、千葉以南の南日本の沿岸で見られます。
こちらは毒針を持ち、マンタとは呼ばれません。
マンタに関してはまだ謎が多く、解明されていないことも多数あります。
そのようなミステリアスな生物だからこそ、多くの人々を魅了しているのかもしれませんね。
2.宮古島のマンタ
島の形が巨大マンタのような宮古島ですが、マンタに会えるシーズンは主に12月〜3月の4ヶ月間。
10月、11月に会えることもあります。
そのほかの季節にマンタに会ったというダイバーもいます。
宮古島南岸のダイビングスポットは、北風が吹いている時期に限って言うと、その寒さからか、リピーターでも潜ったことがないという方も多いです。
ほとんどの方にとっては夏場に潜るイメージが強いらしく、冬場は人が少ないのです。
伊福部島や下地島の地形とはまた違ったかたちをしているので、新鮮な気分でマンタウォッチングを楽しめるダイビングスポットとなっています。
宮古島では石垣島のようなクリーニングステーションは見つかっていませんので、今のところ必ず会えるポイントはありません。
逆に、確率は高くないけれど、宮古島周辺海域であれば、どこにいても会える可能性はあります。
毎日マンタと会えたり、逆にまったく会えない日が続いたりすることもありますし、年によって「当たり年」と「はずれ年」があるくらいなので、マンタに会えるのは運次第といえるでしょう。
先ほど話に出たマンタのクリーニングステーションとは、マンタの身体に付くゴミや寄生虫を食べてくれるホンソメワケベラという魚がたくさん住んでいる根のことを呼びます。
根といっても、木が生えているわけではなく、海中で山のようになっている箇所を指します。
そこには、ホンソメワケベラに体を掃除してもらうために訪ねてくるマンタが集まるのです。
以前は、久米島も宮古島と同じように、必ずマンタに会えるとは限らなかったのですが、クリーニングステーションが見つかって以来、マンタを常時見られるようになりました。
宮古島でマンタが目撃されるのは、海面に顔を出して水面近くのプランクトンを捕食しているときです。
これらは、冬の限られた季節に海底から湧き上がってくる海流に乗って、プランクトンが水面近くに上がってくる瞬間です。
このプランクトンを狙って、マンタが水面に浮上してきます。
水面にプランクトンが滞留しやすい、波の無い日が狙い目です。
運が良ければ、プランクトンの密度が高いところを、何回も上下に旋回したり、ホバリングしたりする姿を目撃できるかもしれません。
波が高い日はプランクトンが散乱してしまうので、マンタもあまり現れません。
ウミガメも水面付近でぷかぷかと浮いていることがあるので、タイミングが良ければウミガメとマンタ、同時に出会えるかもしれませんね。
ほかに目撃できるタイミングとして押さえておきたいのは、餌場と餌場の間を移動しているときです。
マンタはある程度決まったルートを移動しているので、ルートがわかっていれば移動中のマンタに出会うこともできるかもしれません。
移動中のマンタは、ただ移動しているだけではなく、プランクトンを捕食しているので、出現ポイントは水中にもあります。
また、春先3月4月ごろの繁殖シーズンには、1匹のメスを複数のオスが追いかける場面に出くわすことがあり、この時には一列に連なったマンタの団体に遭遇できる可能性もあります。
3.どんなコンディション?
マンタに会える時期の水温は20~22℃、気温は17℃から18℃となっています。
ボート上ではちょっと寒いかもしれないぐらいの気候です。
5mmウェットスーツにフードをプラスするか、ドライスーツ、船上ではウインドブレーカーやボートコートがあればいいでしょう。
しっかりと防寒対策をしていれば、快適に潜ることができます。
4.まとめ
マンタの他にも、ウミガメや運が良ければイルカ、クジラにも会えるかもしれません。
マンタに会えることを願いながら、ダイビングを楽しみましょう。
また、宮古島の南西にある來間島への間にかかる、1700mほどもある美しい橋の下をマンタが泳いでいくところが見られることがあります。
ほかにも漁港や海中展望塔などからの目撃情報も少なくはありません。
運が良ければ海岸を歩いてるだけで、マンタに出会えることもあるそうですよ。
宮古島にはTシャツ、小物など、マンタをあしらったお土産がいっぱいあります。
天気の悪い日には、お土産屋でマンタグッズを購入すると、帰ってからもいい思い出として残るでしょう。