現地コラム
COLUMN
サンゴの種類
1. サンゴとは
サンゴは世界中に広く生息し、日本近海でも美しい姿を多く見ることができます。
一般的にサンゴは植物だと思われがちですが、実は生物学的に見るとサンゴは動物であることを知っている方は少ないのではないでしょうか。
ここではまず、サンゴの基本的な知識について解説していきます。
サンゴが地球に登場したのは、人間が誕生するよりはるか前、約4億年も前のこと。
見た目は植物のようですが、前述のとおり、動物に分類されます。
サンゴの多くは、触手などに毒針を持っているため、クラゲやイソギンチャクと同じ” 刺胞動物”です。
さらに、食事と排泄を同じ口で行う腔腸(こうちょう)動物でもあります。
サンゴをよく見ると、一つ一つ小さな粒が集まって形作られていることがわかります。
これは「ポリプ」と呼ばれるもので、大まかに言えば、サンゴは「ポリプ」が集まってできているのです。
一つのサンゴが数万個近いポリプの群体でできており、一つ一つのポリプが分裂を繰り返すことにより、サンゴ自身は1年で1cm~10cmのスピードで成長します。
また、食事の際もポリプを使って動物プランクトンを捕らえ食べる、というシステムです。
サンゴは沖縄だけでも約200種類ほど存在しますが、大きく「造礁サンゴ」と「非造礁サンゴ」とに分けることができます。
〇造礁サンゴ
サンゴ礁の形成に関わるサンゴを総称して造礁サンゴと呼びます。
造礁サンゴの特徴は、外敵から身を守るために石灰質の石を自らの骨格の下に作り、その硬い骨格のまわりに住み着くというものです。
石灰質はサンゴの成長とともに大きくなり、テーブル状、枝状、キャベツ状など、多様な形に長い年月を経て成長し、サンゴ礁を形作っていきます。
〇非造礁サンゴ
群生せず、単体で生息するサンゴの総称です。
骨格を研磨することで宝石として販売されます。
アカサンゴやモモイロサンゴ、シロサンゴ、ベニサンゴなどがあり、数100メートルの深い海の中でゆっくりと時間をかけて成長します。
沖縄の1/4の魚は、サンゴ礁に支えられて生活しているといっても過言ではありません。
サンゴ礁を住処にする魚や、サンゴ礁自体を食べる魚もいます。
また、台風や高波の日にも自然の防波堤となり、そこに集まった生物を守るなど、サンゴが生態系に及ぼす影響は非常に大きいのです。
〇サンゴの性質
サンゴは動物ですが、水中の二酸化炭素を吸収し、酸素を吐き出します。
これはサンゴの中にいる褐虫藻(かっちゅうそう)という藻類による働きによるものです。
褐虫藻の単位面積当たりの仕事としては、陸上の植物よりも強力です。
サンゴは、この仕組みによって得られた糖分のエネルギーに依存して生活しています。
褐色藻は水温18~28℃の水中で生きるため、暖かい浅い海を好みます。
しかし、深い海に生息する非造礁サンゴは褐色藻と共生していないため、水温の低い深い海の中でも生息することが可能です。
サンゴにはオニヒトデという天敵がいます。
オニヒトデはサンゴ礁に生息し、サンゴを餌にするため、サンゴが死滅させられてしまうこともあるほどです。
オニヒトデなどの外敵による死滅を除けば、サンゴの寿命は、種類によりますが数年から長いもので数千年までと、まちまちです。
また、サンゴは年に1回放卵するのですが、その多くは満月の夜に一斉に行われます。
〇サンゴの白化
色とりどりだったサンゴが真っ白に変化し、やがて死ぬことをサンゴの白化といいます。
沖縄では、2016年に大規模な白化がありました。
サンゴと共生する褐虫藻は、気候変動や水質汚染などのためにストレスを受け続けると数を減らしてしまい、その結果、サンゴそのものが白くなってきます。
最初のうちは、サンゴも生き続けることができますが、約2週間この状態が続くと死んでしまうのです。
ただ、最近の研究で、死を前にした褐虫藻が、正常な褐虫藻の能力の2~3倍もの力を出して光合成をしていることがわかってきています。
褐虫藻もただ死を迎えるのではなく、最後までサンゴを生かすための努力をしているのですね。
2. 宮古島のサンゴ
世界中の海には600~800種類のサンゴが生息すると言われていますが、沖縄の海にはその半数以上の種類が生息していると言われています。
また、沖縄では今も次々と新種が発見され続けています。
そのため、世界一のサンゴの海といっても過言ではありません。
沖縄の海のサンゴ礁は、世界の分布域の中では北に位置すると言われています。
サンゴ礁のできる海は、東南アジアのような温かい海に限られるのですが、沖縄では暖かい黒潮が流れていることと、透明度が高く日光が深く差し込むことのできる海であることなどの条件がそろっており、サンゴが成長できるようです。
サンゴ礁は、島のまわりにでき、島を取り巻く防波堤として陸地を守っており、多くの生き物の生活や生態系を守る場所となっています。
3. サンゴの種類
〇八射サンゴ
いわゆる宝石サンゴです。
深海で樹枝状の群体を作りますが、成長が非常に遅いため、密輸や乱獲によるダメージや生体数の減少が問題になっています。
アカサンゴ、シロサンゴ、モモイロサンゴ、ミッドサンゴの4種類はワシントン条約附属書Ⅲ類に掲載されています。
〇イシサンゴ
造礁サンゴのほとんどがこれに含まれます。
イソギンチャクに似たポリプ構造で、隔膜の間に石灰質の骨格を発達させます。
イソギンチャクに似た本体は柔らかく、毒針のある触手を持ち、その大半は人に害があるほどではありませんが、アナサンゴモドキなど、一部強力な毒を持つものも。
◉チヂミウスコモンサンゴ
サンゴ礁の波の静かな礁池に棲む美しいサンゴです。
薄く広く葉状に成長し、幾重にも集まって大きな群体を作ります。
◉ノコギリクサビラサンゴ
「くさびら」とはキノコのことです。
クサビライシのなかまは、キノコのような形が基本形です。
円盤形または楕円形の体で、真ん中の大きめの溝が口、放射状の溝の間に触手が格納されています。
◉ハナガサミドリイシ
短い枝のサンゴでは、最も多く見られる種の一つです。
水深10m以浅で見られます。
色は共生する褐虫藻に依存するため、緑、ピンク、紫など様々です。
小型の甲殻類が好んで住処とします。
高水温に弱いことが特徴で、比較的水深が深い場所に生息します。
◉ハナヤサイサンゴ
直径15~20cmのカリフラワー状で、よく浮きや杭などについているサンゴです。
水深数mのサンゴ礁に多く見られます。
枝の間にはサンゴガニ類やサンゴテッポウエビ、ダルマハゼ類などが住みつきます。
◉マルキクメイシ
造礁サンゴの一種で,塊状または半球状の群体をしています。
ポリプは直径5~6mmの円形で、30cm以下の小型のものが多く、色は茶褐色です。
◉ユビエダハマサンゴ
枝状の群体を形成するサンゴです。
いろいろな種類のスズメダイが隙間に入って暮らしています。
春にはコブシメが卵を産み付けにやって来ます。
オニヒトデには好かれず、白化にも強いため、頻繁に見かける種類です。
〇ヒドロサンゴ
サンゴモドキ、アナサンゴモドキとも呼ばれます。
サンゴやイソギンチャクと同じくらいに大きくなるものもあり、造礁サンゴとみなされるものもあります。
〇軟質サンゴ
ソフトコーラルと呼ばれ、細かな骨格がばらばらに入った柔らかな群体を作ります。
ヤギ、トサカ、イソバナなど、造礁サンゴと違い柔らかい体をしているものをひとまとめにしてこう呼んでいます。
カラフルで、植物のようにも見える姿です。
4. 宮古島でサンゴを楽しむには?
それでは、宮古島でサンゴ鑑賞を楽しむにはどうしたらよいでしょうのか。
実は、宮古島自体、サンゴが隆起してできた島なのです。
宮古島といえば思い浮かべるのは白い砂浜。
あの美しい白い砂浜は、砕けたサンゴが飛び散ってできたものです。
そんな美しいサンゴの光景が見られる宮古島のスポットについてご紹介します。
<八重干瀬(やえびじ・やびじ)>
八重干瀬は、南北におよそ17km、東北におよそ6.5kmと日本で最大級のサンゴ礁であり、国の天然記念物にも指定されています。
干潮の際には、海からせり上がったサンゴ礁を見ることができます。
圧巻のスケールのサンゴ礁を見たいのなら、八重干瀬はまさに最適スポットです。
<吉野海岸>
宮古空港から車で約30分。
宮古島の東側にある吉野海岸ではシュノーケリングを楽しむことができます。
ビーチからわずか数メートルの距離にサンゴが群生しているため、手軽にサンゴ鑑賞を楽しめるスポットとして観光客からも人気のエリアになっています。
屋台やレンタルショップも充実しているため、手軽に訪れることができるのも嬉しいポイントです。
干潮時はサンゴが干上がってしまうため、シュノーケリングは満潮時がおすすめ。
また、シュノーケリングの際はサンゴを踏んで怪我をすることの無いよう、気をつけましょう。
サンゴ礁の中をカラフルな魚たちが泳ぐ姿は、まさに絶景。
運がよければ、ウミガメたちの遊泳も見ることができるかもしれませんよ。
5. まとめ
サンゴには多様な種類があり、それぞれ違った色、模様、大きさなどを楽しむことができます。
「八射サンゴ」(宝石サンゴ)など、深い海に分布するサンゴは、ダイビングなどで見ることは出来ませんが、そのほかのものはシュノーケリングなどのシーアクティビティでも見ることのできるサンゴです。
いわゆるサンゴ礁で見られるのは、「イシサンゴ」と呼ばれています。
宮古島だからこそ見ることのできる、多種多様なサンゴの世界の魅力を一度覗いてみてはいかがでしょうか。