現地コラム

COLUMN

宮古島マングローブ

2020-09-27 07:26

1. マングローブとは?

マングローブ
マングローブとは、よく誤解されがちですが、マングローブとは川の河口付近で海水と淡水が混じりあうところに生える植物の総称で、特定の植物の名前ではありません。

一般的にマングローブは、水の浸る土地に生育します。

宮古島には海に流れ込む川がなく、そのかわりに海岸近くには、多くの地下水脈の湧き出し口があります。

宮古島のマングローブ林は、その周辺に群生するという、宮古島独特の形で発展を続けてきました。

マングローブ林では、木々同士が密集して育つため、その根や枝どうしが絡み合い、特徴的な表面構造が形成されます。

絡み合った根や枝の間は、様々な動物の隠れ家として機能するため、マングローブ林には、カニや鳥などたくさんの生物が生活しており、豊かな生態系が広がっています。

 

マングローブの植物は、通常は木々が自生することができない塩水の中にも根を広げることが出来ます。

では、どのようにして塩水の中での自生を可能にするのでしょうか?

これを解決する2つの特徴がマングローブにはあります。

1つ目)根の仕組み

マングローブの根は、塩分の流入を抑制する仕組みを持ちます。

これにより、塩水から真水のみを組み上げ流すことができるのです。

2つ目)葉の仕組み

マングローブは、根の塩分をブロックする仕組みを通り抜けたり、直接的な潮風により蓄積された塩分を、葉に蓄積させることができます。

塩分の溜まった葉を落葉させることで、マングローブ自体に塩分が蓄積することを防いでいます。

このように、過酷な環境下でも生き残ることができるよう、マングローブは自らを環境に適応させていったのです。

また、マングローブの種子は、その果実の一部が成長することで下に落ち、水流に流されたり、泥に刺ささるなどして、漂着した場所で発芽します。

 

●島尻マングローブ林
島尻マングローブ

宮古島にある一番大きなマングローブ林が「島尻マングローブ林」です。

宮古島北部、池間島の手前にあります。

駐車場からは、直接マングローブ林につながる遊歩道がありますが、遊歩道とはいえ、板張りの歩道なのでピンヒールなどの歩きづらい靴は避け、動きやすいシューズや服装で訪れることをおすすめします。

また、島尻マングローブ林付近は日陰がないため、帽子やサングラスなどの日を遮るものや日焼け止めを持っていくといいでしょう。

宮古空港からの所要時間は車で約20分程度です。

ただし、駐車場からマングローブ林までの遊歩道を歩く時間が、片道約10〜15分かかります。

そのため、往復で最大30分程度の時間を要するため、観光の際などは余裕をもったスケジュールプランを組むのが良いでしょう。

島尻マングローブ林の大きな魅力は、そのマングローブの種類の多さです。

「ヤエヤマヒルギ」「オヒルギ」「メヒルギ」「ヒルギダマシ」「ヒルギモドキ」など、宮古島にあるすべてのマングローブを、島尻マングローブ林で見ることができます。

また、観光客に人気が高いのが、シーアクティビティです。

マングローブや水生生物を観察しながら楽しむカヌー・カヤックツアーも通年開催されており、より近い距離からマングローブを観察することもできます。

ツアーの開始時間は午前か午後で、予約が必要になります。

 

●川満(かわみつ)ウプカー

宮古島のもう一つのマングローブ群生地が「川満マングローブ」です。

島尻と比べればかなり小規模ではありますが、与那覇湾に注ぎこむ湧き水の水路にマングローブが広がる独創的な光景を目にすることができます。

「ウプカー」とは一般に「大川」のことを指し、川満でも湧き水が多く、川や水に支えられて集落が発展してきました。

川満マングローブは、宮古島空港から国道390号線をほどなく行ったところに位置します。

川満ウプカーでは「ヤエヤマヒルギ」「オヒルギ」「メヒルギ」などのマングローブが確認されています。

また、オオゴマダラなどの蝶や野鳥たちなど、いろいろな生き物がマングローブと共生している姿も見ることができるスポットです。

川満ウプカーを取り囲む遊歩道の途中には、展望デッキと東屋、ベンチやテーブルもあるため、マングローブを眺めながら散歩し、疲れた時は一休みするのもよいでしょう。

遊歩道は道の途中で石造りの道に変わりますが、満潮の際は水の中に沈んでしまうため、注意が必要です。

また、雨の後はすべりやすいので注意してください。

 

2. マングローブの種類は?
マングローブ

マングローブ林に訪れる日の干潮時刻がわかるなら、その前後の時間帯に訪れることがおすすめです。

なぜなら、潮が引いて現れるマングローブの足元の様子や、干潟の興味深い生物を観察することができるからです。

逆に満潮時刻ごろには、水に浸かってゆらめくマングローブなど、全く違う風景を見ることもできますよ。

また、マングローブ林に訪れる前にはどういったマングローブが見られるのか覚えておくと、実際に訪れた際により楽しむことができます。

ここではマングローブ林の種類についてご紹介します。

 

〇ヤエヤマヒルギ

一本の幹の根元からたこ足のように根が出ており、葉の先端はとがっています。

樹高4m~8mで、マングローブ林の海側に育ちます。

 

〇オヒルギ

樹高5m~10mと高めで、姿が男性的というところから名前がつきました。

地上に根を張り巡らせ、開花時には小さく赤い花が咲きます。

吸い上げた海水の塩分を葉っぱに集めることができ、塩分を吸い上げて黄色くなった葉を落葉させます。

マングローブの中では比較的陸側に育ち、地面の下の根から膝根という根を地上に現すことが特徴です。

絶滅危惧II類VUに指定されているマングローブです。

 

〇メヒルギ

樹高2m~5mで、樹形が清楚であるということから名前がつきました。

マングローブの中では陸側に育ち、特徴的な板根を持ちます。

他のマングローブに比べると、やや寒さに強いため、鹿児島県など沖縄よりも経度が高い地域でも育つことができます。

メヒルギもオヒルギと同じく、準絶滅危惧種に指定されているマングローブです。

 

〇ヒルギモドキ

ヒルギ科ではありませんが近しい種類です。

ヒルギに似ているのでヒルギモドキと名付けられました。

樹高2m~4mで、明るい色の光沢のある葉が特徴で、砂地にも定着することができます。

群生地では後背地を好んで育つマングローブです。

根は水平に張り、絶滅危惧ⅠA類に指定されています。

 

〇ヒルギダマシ

樹高50cm~2mで、ヒルギモドキと同様にヒルギ科ではありませんが近縁です。

割り箸を立てたような筍根が出るのが特徴的で、マングローブの中では海側に育ちます。

絶滅危惧ⅠB類に指定されています。

 

<マングローブの中に住む生き物たち>

〇ミナミトビハゼ
ミナミトビハゼ

地元では「とんとんみー」と呼ばれるハゼ科の魚です。

目が大きく体長10cmほどの魚で、泥の上をぴょんぴょんはねて移動する姿がかわいらしいです。

 

〇ベニシオマネキ
ベニシオマネキ

体が赤色のカニです。

人の気配がすると一斉に泥の穴の中に隠れてしまいますが、しばらく静かにしていると、ベニシオマネキが少しずつ顔を出し、写真のように地面のあっちこっちに赤い点々が見えてきます。

 

〇ミナミヒメシオマネキ

こちらもカニの一種で、2020年3月に新種であることがわかったものです。

シオマネキのオスは、片手のハサミが大きくなります。

ハサミが大きいほどメスに人気があるそうです。

 

〇コメツキガニ

ミナミヒメシオマネキ同様、こちらも新種であることがわかったカニです。

カニといえば横向きに移動する姿が想像されますが、コメツキガニは横だけじゃなく、縦にも歩けるという特徴を持っています。

このカニも人が近づくと一斉に泥の中に隠れますが、しばらく静かにみていると、少しずつ姿を現します。

 

〇ガザミ

宮古島では食用とされています。

地域によっては「ワタリガニ」と呼ばれ、北海道から宮古島まで広く生息しているカニです。

 

3. 周辺のご案内

〇パーントゥ

島尻は、「パーントゥ」という、体中に泥を塗って神々に扮した人々が集落の中を歩き回り、集落の人々に泥を塗りつけていくお祭りで有名です。

集落の島尻購買店では、いろいろなグッズが売っています。

泥を塗られた人は災いが落ち、幸運が舞い込むと言われるお祭りです。

旧暦の9月上旬ごろに行われる日本でも珍しいお祭りですので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

 

4. まとめ

マングローブ林には数々の植物と生物を見ることができます。

雄大な自然を感じられるスポットとして非常におすすめです。

宮古島に旅行する際には、島尻マングローブ林や川満マングローブへ訪れてみてはいかがでしょうか。